標高の高い山々に囲まれ冷涼な気候であることから「大阪の軽井沢」とも称される豊能エリア(豊能町・能勢町)。豊能町を拠点にローカルメディアを運営し、さまざまな企画でこの地域を盛り上げる宇都宮頼子さんをガイドに迎え、自然豊かな山道をハイキングしつつおすすめスポットを巡りました。
大阪北西部に位置する豊能エリア。市内から行くには乗り換えがちょっと大変な印象がありますが、実は梅田から今回紹介する妙見口駅までは電車で最速50分ほど。意外と近くにありながら、能勢電車に揺られた先には「ここホンマに大阪?」的な里山風景が待っている穴場の観光エリアです。標高600m以上の山々に囲まれたこのエリアは、1年を通して気温が低いことから「大阪の軽井沢」と呼ばれることも。山々に配された多彩なハイキングコースでは、四季折々の風景が楽しめるのも魅力です。
今回は、豊能を拠点にローカルメディアやイベントを運営する宇都宮頼子さんをガイドに迎え、大阪の自然名所「大阪みどりの百選」にも指定された標高660mの妙見山へハイキング。平安時代から続く「吉川八幡神社」や、山中の旧参道に残る史跡、北極星信仰の聖地「能勢妙見山」など、歴史を辿りながらじんわりと心が満ちていくようなプランを紹介いただきました。里山の自然と地元の方の温もりに触れて心身ともにデトックスする一日はいかがでしょうか?
Guide
「一般社団法人とよのていねい」代表理事。一度は離れた地元・豊能に、育児をきっかけにUターン。2016年、夫婦でWebマガジン「とよのていねい」を発足し、地域活性につながるさまざまなイベントを企画・運営。「シェア図書館」を事務所で営んでおり、開館日はお会いできる可能性もあり。
◎とよのていねい事務所
能勢電鉄「ときわ台」駅から徒歩3分
〒563-0102 大阪府豊能郡豊能町ときわ台1-11-10
能勢電鉄妙見線の終着駅、妙見口駅からスタート
梅田から電車を複数乗り継ぐこと約50分、距離が近づくほどに車窓が緑に染まっていく能勢電鉄の終着駅・妙見口駅。大阪最北端の駅としても知られ、妙見山への玄関口であることから名付けられたこの駅は、小さな駅舎がかわいらしくてローカル感たっぷり。
「都会と比べるとちょっとひんやりするけど、空気が澄んでいて気持ちいいんですよね」と笑顔で迎えてくれた宇都宮さん。今日は豊能エリアの魅力を熟知する彼女に、一日丸ごと楽しむモデルコースを教えてもらいます。ワクワクの1DAYツアーにいざ、出発!
まずは駅前にある「豊能町観光案内所」へ。案内所ではハイキングマップの無料配布もあり、各ルートの特徴や注意事項などを確認できるほか、事前にボランティアガイドを予約しておけば、豊能エリアの歴史などを解説してもらいながら登山口まで案内していただくことも可能です。
案内所前にある大きな看板で、妙見山のハイキングコースを確認。山頂へのメインルートだったケーブル・リフトは惜しまれながら2023年に廃線となりましたが、現在も5つのハイキングコースから山頂に登ることができます(車でのアクセスルートもあります)。
今回は、片道1時間20分程度、初心者向けにとすすめてくれた「新滝道コース」をチョイス。山道の入り口から山頂まで一本道でつながっており、明治&大正時代に参道として栄えた道中には古い鳥居や廃屋が点在しているので、趣きあふれるハイキングが楽しめます。
駅を出て左手、登山口へと続く「花折街道」は「能勢の妙見さん」の呼び名で親しまれている日蓮宗の霊場「能勢妙見山」への参道です。江戸時代中頃から栄えたというこの参道はかつて、旅館や茶店、土産店などが立ち並び、大いににぎわっていたんだとか。
「吉川村で生産した品々を荷車などで輸送する際、路肩に咲いた草花を摘み(折り)ながら運んでいたことが『花折街道』の由来だそうです」とボランティアガイドさん。宇都宮さんも「なにげなく使っている地名にそんな由来があったなんて!」と驚いた様子。「こうして教えてもらうことで、自分とまちの解像度が一つずつ上がっていくのが楽しくて癖になるんです」と教えてくれました。
今回は妙見山を紹介しますが、豊能町には高代寺山やその周辺の里山エリアなど、自然を感じるコースがたくさん。ボランティアガイドさんは皆さん知識が豊富なので、案内所で会えたらぜひ見どころを相談してくださいね。
登山について
事前にルートや天気を確認し、地図やコンパスを準備するなど十分な装備で行ってください。また、山岳保険などもご活用ください。
地域に愛される、個性派神社でハイキングの安全祈願
山道に入る前に、地元の氏神でもある「吉川八幡神社」でハイキングの安全祈願。平安時代に源頼仲が創建した歴史ある神社で、第15代応神天皇を主祭神として祀っています。
能勢電鉄の終着駅・妙見口駅のご近所という縁もあり、境内には引退した阪急電車の車両展示があるほか、「能勢電御守」「鉄ネタおみくじ」など鉄道マニアにはたまらない授与品も。Xフォロワー数2.1万人、ユーモアあふれる関西弁ツイートが話題の御神馬・いづめにも、運が良ければ会えるかもしれません。
地元住民にも開かれた身近な神社で、長女の七五三詣でもお世話になりました。季節のお祭り、春大祭・秋大祭では、花吹雪がダイナミックに舞う湯立神事、雅楽のコンサートなど、鎮守の森に囲まれたロケーションとの相乗効果で別世界に迷い込んだようなひとときを味わえます。昔ながらの餅撒きもあって楽しめますよ。
趣きあふれる旧参道をハイキング
花折街道を進むと「妙見の森ケーブル」の駅舎が見えてきます。ここを過ぎると山頂までお手洗い&自販機がないため、心配な方は立ち寄るのがベターです。駅舎の右側が登山道「新滝道コース」への入り口。いよいよ山道に入っていきます。
カサカサと音を立てる落ち葉を踏みしめながら歩く秋の山道は風情たっぷり。序盤に現れる鳥居をくぐると山頂まで急勾配が続きます。「登山初心者の方はしんどいかもしれませんが、ルート前半はぽつりぽつりと点在する苔むした史跡を、後半は脇に流れる川のせせらぎの音を、時には立ち止まってゆっくり味わいながら登ってみるといいですよ」と宇都宮さん。
互いに励まし合いながら登ること1時間半程度、無事、山頂のお寺「能勢妙見山」に到着です。
星の王様が降り立った北極星信仰の聖地「能勢妙見山」
1200年以上前に行基が開いたとされる霊場で、開運・芸能を司る北極星の神様「妙見大菩薩」を祀る日蓮宗寺院。北極星信仰の世界的聖地として知られ、星の王様が山に降りてきたというロマンティックな言い伝えが残っています。
まずは、「妙見大菩薩」を祀る「開運殿(本殿)」を参拝。能勢家の家紋であり、妙見山のシンボルでもある「切竹矢筈十字(きりたけやはずじゅうじ)」があちこちに散りばめられていました。
本殿の並びには、4代目中村歌右衛門が寄進した立派な浄水堂があり、妙見山の地下200mから汲み上げた天然水「歌右衛門の水」が楽しめます。副住職さんいわく「超軟水」で、氷河期から続くブナ林に育まれた大変まろやかな口当たり。浄水堂横の蛇口から汲んで持ち帰ることも可能です。
北斗七星に補星を1つ加えた数字になぞらえて、敷地内には大小さまざまな8体の神馬の像が奉納されています。注目すべきは、太平洋戦争の際に金属製として供出されたものの、石製だったため戦地から戻ってきた「戻り馬」。旅行や入院から無事に帰って来られるようにと祈りを捧げる人も多いそう。参拝ついでに探してみてください。
「みんなに撫でられてピカピカになってしまったばっかりに金属と間違われてしまったこと。おまえ石やんけ、って出戻ってきたエピソード。なんだか親しみを感じますね……」と、戻り馬を愛おしそうに見つめる宇都宮さん。
本殿に向かう途中に設置された展望デッキからのパノラマビューも見逃せません。天候の良い日は大阪湾から淡路島までを一望できます。
展望デッキの近くには、1998年に建造された信徒会館「星嶺」があり、信徒を中心に使用されています。普段は入ることができませんが、信仰のルーツである星と、切竹矢筈十字をモチーフにした唯一無二のデザインに圧倒されます。
妙見山のお経はビートが効いていて、倍音で響く読経はまるで山頂のレイヴ!?みたいな感じでめっちゃカッコいいんです。境内の経堂では、9時半・11時・14時・16時の1日4回お経があげられているのだとか。訪れた際はぜひ耳を傾けてみて!
山頂の古民家カフェで絶景&ご褒美ランチ
次に向かったのは、「能勢妙見山」の境内にたたずむ古民家カフェ。母と息子のお二人で営まれていて、契約農家から仕入れる旬の野菜をたっぷり使ったランチや自家製ドルチェが楽しめます。
大きな窓から山々を見渡す最高のロケーション! ちょうど雲間から太陽が顔を覗かせたタイミングで、美しい景色を眺めることができました。
メインのパスタもしくはピザに、スープ・サラダ・日替わりの惣菜3種類が付く季節のランチセットを用意(金曜はフードメニューの提供はなし、メインは曜日によって変わります)。今回は、自家栽培のバジルを使用した「ジュノベーゼの生パスタ」をオーダーしました。「一品一品素材を吟味された様子や、調理の工夫に、丁寧なおもてなしの心を感じます。登山後のご褒美ランチにぴったりですね」と宇都宮さんも絶賛でした。
自家栽培の野菜や自家製の生パスタを使うなど、こだわり満載のイタリアン。この地域ならではの旬の味覚に出会えます。「大阪の軽井沢」ならではの風土のおかげで、水と空気がおいしいから、野菜も米もおいしい。豊能エリアには隠れたグルメスポットがいっぱいなんです!
下山後にホッとひと息&お土産購入
下山後は「妙見山駅」の目の前にある「かめたに 本店」に立ち寄ってひと休み&お土産探し。豊能町に工場がある「山口納豆」などの特産品の販売に加え、猪肉などの地元食材を生かした食事の提供をしています。
小腹が空いた方は、猪肉が入った名物の「ししフルト」と能勢の天然水を使った「能勢ジンジャーエール」がおすすめです。
最近新設された手作りパンコーナーはパン好きなら要チェック。町内でお酒が飲める数少ない食事処なので、ハイキング後に名物の猪肉料理で乾杯するのもいいですね!!
豊能をもっと堪能したい方必見のジビエ料理レストラン
最後に紹介するのは、豊能の自然環境や肥沃な土壌に魅了され、大阪市内から移住したオーナーシェフ・山上忠彦さんが手掛ける、宿泊施設を備えたジビエ料理レストラン「オーベルジュ ヤマガミ」。妙見口駅周辺から少し離れた高山地区で、狩猟で得たジビエを軸に、自ら栽培する米や野菜を使ったメニューを提供しています。
アンティーク調の家具を配した温かみのあるレストランスペース。暖炉からは薪がパチパチはぜる音が聞こえ、居心地のいい雰囲気が漂います。
シェフは「まちの名物を作りたい」という思いから、耕作放棄地となった棚田を再生してブドウを栽培。レストランの横にワインの醸造所「とよの高山ワイナリー」をオープンしました。生産数は現在ごくわずかのため、レストランを利用した人のみが味わえる特別な品として、醸造を進めています。地元産の野菜やジビエを使った料理に、同じ土地で醸造されたワインを合わせる……。なんともぜいたくな体験ではないでしょうか?
Photo by KENGO WATANABE
Photo by KENGO WATANABE
山の傾斜に水田が連なる「高山の棚田」や、キリシタン大名・高山右近の生誕地碑など、散策スポットが徒歩圏内にあるのも嬉しいところ。豊能をもっと満喫したい方は、1泊2食付きの宿泊コースを予約して、朝から里山散策を楽しんではいかがでしょうか。滋味あふれるジビエ料理を堪能してのんびり過ごせば、ハイキングで疲れた身体も癒やされるはず。
※妙見口駅周辺から離れた位置にあるので、アクセス方法を調べた上でご予約ください。
一度に10名まで宿泊できるので、家族や友人を誘ってワイワイ過ごすのもいいですね。ちなみに待望のご当地ワインは2025年の春に解禁予定。早めに予約しなくては!
大阪北部の豊能エリアで、里山の自然と人情に心がほころぶプチトリップを
「里山ならではの風景に癒やされ、まちを大切に思う人の温もりやパワーも感じられる1DAYツアーはいかがでしたか?今回案内したスポット以外にも、豊能には魅力がたくさん!ドライブコースならおしゃれカフェや雑貨屋さん巡りもできますよ」と宇都宮さん。
妙見山につながるハイキングコースはもちろん、個性的な神社や寺院、絶景を眺めるご褒美ランチ、地元の名産品が揃うお土産処など、見どころいっぱいの豊能エリア。梅田から電車で約50分と気軽に行けるプチトリップにぜひ訪れてみてください。
※本記事は「しっとんか大阪」から移行したものです。掲載内容は2025年1月時点の情報であり、現在とは異なる場合があります。最新の営業状況や詳細は、各店舗・施設の公式サイトなどでご確認ください。
Photo:高津祐次(Yuji Takatsu)
Edit:高嶋まり子(Mariko Takashima)
Direction:人間編集部