くいだおれの街大阪で独自に進化し続けるカレー文化。「好き」を突き詰めるマニアをゲストに大阪の魅力を深ぼる「OSAKAマニア探訪」。今回はカレー偏愛チーム「関西カレー保安協会」が熱愛するカレーをご紹介します。
大阪の過剰なサービス精神や多様性を尊重する土壌、「人と違ってナンボ」な大阪が生んだ、ボーダレスでジャンルレスでフリースタイルな大阪のカレー。今や、たこ焼き・お好み焼きに並ぶ大阪名物としてテレビや雑誌で頻繁に特集が組まれ、全国からカレーマニアが訪れる「カレーの聖地」になっています。
従来のカレーと区別するために「スパイスカレー」という言葉で括られることもありますが、その特徴を聞かれても、「店ごとに違うから説明できない」としか答えられないほど多種多様。アレンジの枠を越えた「自己表現としての自由なカレー」が食のエンターテイメントとして楽しめるのが大阪の面白さなのです。
その背景には、1992年の創業以来、次世代のカレーの作り手に多大な影響与えたレジェンド「カシミール」、大阪スパイスカレーの代名詞ともいえる「旧ヤム邸」、イベントやグッズで文化を広げた「Buttah(ボタ)」、混ぜて食べるスリランカ式を波及させた「ロッダグループ」、間借り営業を広めた「谷口カレー」などといったパイオニアの存在があります。そして、「自由軒」や「インデアンカレー」など、洋食から進化した昔ながらの大阪カレーも忘れてはいけない存在です。
そんな、大阪ひいては関西の宝である「カレー」を勝手に守るべく、カレーを愛してやまない関西人が立ち上げたチーム「関西カレー保安協会」から、今回は大阪在住の3人のカレーマニアが激推しするカレーをご紹介します。
本当は100選くらい紹介したいのですが、幅広いジャンルを知ってもらうために、大阪市内だけでなく大阪市外の店舗も、老舗から注目店まで10店舗のカレーをピックアップしました。
Guide
大阪市内のおすすめカレー5選
①Columbia8(コロンビアエイト)
スパイスカレーブームの震源地!
合言葉は「右手にスプーン、左手にししとう。」
「Columbia8」は、2008年に開業すると同時に話題になり、『ミシュランガイド 京都・大阪版 2018』でカレー部門として初めてビブグルマンに選出されるなど、数々の伝説を残している大阪スパイスカレーのパイオニア。看板メニューは、左手に持ったししとうをかじりながら食べる「キーマカレー」。口直しのグレープフルーツジュースも重要な名脇役で、苦みや酸味を挟むことでカレーの味や香りを引き立たせる対比効果が計算されているのです。仕上げのスパイスやナッツ、塩漬けインゲンやレーズンもアクセントになり、弾ける食感とともに口の中から広がる香りを階層的に楽しめるのが特徴。
店主のオギミ〜ル☆は誰よりも早く日本の五味(甘・酸・苦・塩・旨)を一皿にレイヤーとして表現してきた天才的イノベーター。不動の定番「キーマカレー」はスパイスと味覚が3D感覚で曼荼羅のごとく果てしなく深遠にクロスオーバーする不朽の名作。
②創作カレー ツキノワ
大阪の出汁文化から生まれた「旨味押し」代表!
日本人の心に沁みる味噌汁的スパイスカレー
2012年から「カリー&カフェ ワルン」での間借り営業・雇われシェフを経て、2016年に「創作カレー ツキノワ」を独立開業。「旧ヤム邸」に影響を受けながら、オリジナリティ溢れる出汁系スパイスカレーをいち早く構築した“旨味押し”代表選手。しっかりパンチのあるスパイスに、昆布・鰹・いりこの出汁と隠し味の味噌が奏でる旨みとコクが見事に調和。コンセプトは「日本人が毎日食べたくなる味噌汁的なスパイスカレー」。
ミュージシャンの店主・スガちゃんの生み出すカレーは、味わいのボトム(低音域)の安定感が秀逸! 昆布だしや味噌での“和”へのアプローチとパウダースパイスの質感を舌で感じる独特の世界観に満ちた一皿は、かまいたち濱家さんも絶賛の大阪出汁カレー代表の逸品。
③iloilo(イロイロ)
野菜を愛するスパイスの伝道師
素朴なのに満たされる、幸せイロイロな一皿
身体にやさしい、野菜の副菜盛りだくさんのカレープレートが人気の「iloilo(イロイロ)」。2013年に堺筋本町(と谷町四丁目の間)で開業し、中津に移転。その後、2021年に玉造に再移転。スパイスと雑貨の販売、ギャラリー、カフェというイロイロ詰まったお店。開店当時、マニアックなスパイスが小売で買える店は珍しく、iloiloのスパイスで初めて本格的なカレーを作ったという人も多いはず。カレープレートは、ヴィーガン対応の「ベジ」と、肉を使った「ノンベジ」が選べます。
お腹は満たされるのに身体が軽くなるカレープレート。無農薬の玄米を囲むのは、それぞれ手の込んだ副菜と、素朴な旨みのあるダル、それ自体がスパイスであるかのようにすべてを底上げするノンベジのカレー。仕込みの大変さに想いを馳せては毎回拝んでます。食べ終わるのが惜しい気持ちをチャイで落ち着かせるのも定番の儀式。
④元祖とんかつカレー カツヤ
文化遺産レベル! 元祖にして究極……
とんかつのために考案された3年熟成ルー
1959年創業の老舗「元祖とんかつカレー カツヤ」は、カレーライスにカツをのせた洋食屋のカレーとは異なり、カツに合うカレーを独自開発した専門店。こだわりのルーは、香味野菜を炒めたペーストを濃縮して約3年間熟成させ、リンゴなどの果実やスパイスを加えたあと、さらに2ヶ月ほど寝かせる……という気の遠くなる工程を経て完成。2023年、店舗老朽化のため元店舗の近所に移転。
食べる度に「これも3年前に仕込んだものなのか」と過去に想いを馳せる感慨深いカレー。そして、カツカレーなのに全く胃もたれしない野菜の滋味……。もはや文化遺産に認定すべき大阪の宝! 肉の部位によって価格が異なりますが、最初に食べるなら「B(上ロース)」一択! 食べ終わって10分したらまた同じものを食べたくなります。
⑤Mカッセ
大阪のトゥーマッチ(やりすぎ)精神が炸裂!
フレンチシェフが考案する破壊的創作カレー
フランスで修行し、祇園のフレンチレストランで働いていたフレンチシェフが作る至高のカレー。雑誌『Meets Regional』のカレー特集の表紙を飾った、濃厚なワタリガニのビスクのカレーで一躍有名に。破壊者を意味する「Mr.カッセ」というあだ名が店名の由来。繊細かつ豪快に、フランスの伝統料理を次々とカレーにアレンジする魔術師。
※2014年1月4〜14日までのメニューです(週替りカレーはお店のSNSアカウントでご確認ください)
カレーの限界を突破し続ける破壊的創造者。そこまでやる!? その価格でやっちゃう!? そんなのアリ? いやいや、やり過ぎだってば!!!! と、実際に叫んでしまうほど、究極進化したカレーの姿に目を疑うこと間違いなし。食べたあとはスタンディングオベーション。
大阪市外のおすすめカレー5選
①東大阪市:大衆中遊華食堂 八戒(はっかい)
その道40年の町中華がカレー界を席巻
四川とインドが融合した中華スパイスカレー
店主の末広さんは、20歳という若さで中華料理店を開業。庶民的な町中華として人気を集める傍ら、カレーが好きでスパイス料理も研究。賄いとして出していたカレーがクチコミで広がり、カレー目当ての行列が絶えない店に。2021年、建物の取り壊しをきっかけに同じ東大阪市内に移転。還暦を迎えるタイミングでの大きな転機となり、スパイス中華の店としてリニューアル。
「麻婆豆腐×カレー」というわんぱくな組み合わせは、単純に2つの美味しさを足しただけにとどまらず「カレーなのに麻婆豆腐やん……でもやっぱりカレーやんか! いや麻婆……」と、ひと口でカレーと麻婆豆腐をなん往復もできて最高! 東大阪まで行く価値大ありのラムスパイス炒めもおすすめ。最初の中華スープが既に美味しい。
②藤井寺市:辛口伽麗レテテ
食後はスッキリ爽快!
中毒者続出の「食べるサウナ」
2014年まで堺市で人気を得ていた名店が、5年の沈黙を経て2019年に藤井寺市に復活。マニアが足繁く通う、一度食べたら忘れられない中毒性の高い辛口カレー。キーマクラシックは、玉ねぎと人参のピクルスの横に存在感のある刻み海苔がトッピングされているのがレテテ流。創作性に富んだ限定カレーはすぐ売り切れてしまうので注意。
キーマは黒胡椒が効いたシャープな辛さ、チキンは唐辛子ベースの辛さ。3口目くらいでメガネがくもり、半分食べる頃には汗だく。辛いけど美味い、美味いけど辛い……を繰り返し、途中から脳が考えることをやめて軽いトランス状態に。イケメン店主のやさしさと食後のチャイが沁みる〜。スッキリ爽快な食べるサウナです。味玉トッピングもおすすめ。
③豊中市:spice&café Sid Mid(シドミド)
カレー激戦区の庄内で不動の人気を誇るスープカレー専門店。4種の定番メニューと2種の季節限定メニューに加え、ベーシック、クリーミィー、ココナッツの3種類からチョイスできるスープと豊富なトッピングで好きなだけカスタマイズできるのが魅力。人気ナンバーワンは「チキンレッグ」。土日祝限定でスパイスカレーも提供。キッズカレーもあります。
そびえ立つ円錐ライスと皿からはみ出る大ぶり具材たち。見た目も豪快だけど、ボリュームもハンパない。食べても食べても新しい具材が出てきて、驚きが止まらない。至高の満足感を味わえます。スープトッピングのおすすめはケバブボール。
④八尾市:soratobukaori(ソラトブカオリ)
厳選した食材を丁寧に丁寧に……
ポタージュのやさしさに包まれる愛の一皿
数々の間借り営業と実店舗を経て、進化し続ける「soratobukaori(ソラトブカオリ)」。2023年から八尾の「Cuddle day coffee(カドルデイコーヒー)」で約週1回コーヒーとカレーのコラボメニューを販売中。厳選した食材を使い、手間をかけて丁寧に作られる一皿は、メインのスパイスカレー+スパイスポタージュ+デュカ(複数のスパイスとナッツを砕いて混ぜるミックススパイス)の組み合わせ。食後はCuddle day coffeeのドリンクで。
ビジュアルの美しさはもちろん、ひと匙すくうごとに違った香りや味わいを感じる繊細なバランスは「スパイスカレー」という枠を飛び出した芸術作品。ポタージュだけ食べてみたり、カレーと混ぜてみたり。楽しすぎてお皿が空になる瞬間がわからないほど。スパイスの余韻に浸りながら愛情深いメニュー表を眺めるのも至福の時間。
⑤堺市:喰ま呑み (クマノミ)
異次元に吹っ飛ぶパンチ力
専門店を凌ぐ居酒屋の裏メニュー
チンチン電車(阪堺電車)の大小路駅近くにある「喰ま呑み (クマノミ)」は、お刺身、天ぷら、炒めものなど豊富過ぎる酒のアテに、〆のうどんや炒飯まで揃う居酒屋。そんな居酒屋の裏メニューのカレーが専門店を凌ぐクオリティなのです。オムレツや目玉焼きのせなどアレンジも可能。メニューにあるキーマカレーピザやマトンクミン炒めなどスパイスアテメニューもあります。
町居酒屋なのにガチのカレーが食べれる至極の名店。酒のアテたちが全部ウマ過ぎてカレーに辿り着かないこともあるのでご注意を! 店主がスリランカ現地まで行って学んでくるカレーは専門店を凌ぐほど絶品!! カレー&酔に溺れたい夜はココ一択で!
大阪のカレーは面白い!
いかがでしたでしょうか? 老舗から進化系まで、大阪のカレーを10店舗ご紹介しました。
大阪ならではの出汁カレー、創作現地系カレー、中華やフレンチとの融合、ハイクオリティな酒場の〆カレーなど……この10年で様々な新ジャンルを確立し、大躍進した大阪のカレーシーン。欧風カレーやスープカレー、なにか一つとっても「大阪らしさ」が詰まっています。
大阪には、まだまだ面白いカレーがたくさんあります。独自進化し続ける大阪のカレーを、ぜひ味わってください。
※本記事は「しっとんか大阪」から移行したものです。掲載内容は2024年2月時点の情報であり、現在とは異なる場合があります。最新の営業状況や詳細は、各店舗・施設の公式サイトなどでご確認ください。